Project SOLA

誰も理解できない道を進め。未来が君を信じてくれる。

あらぶる、から ちはやふる、へ #ちはやふる #projectsola

      2017/04/11

ベンチャーは皆、ちはやふるを読んだ方がいい。

それぐらい、事業に関して様々に参考になる要素が含まれているのがこの『ちはやふる』だ。作者が乙女座のB型ということも何だか親近感であり、展開がドストライクだ。




ちはやふる、という漫画

ちはやふるは、少女マンガでありながらも、まるで少年マンガのような展開をする。最近の東村アキコの作品を見ていても思うが、マンガはとうとう成熟期に入ったのだろう。

……かつて、江戸時代に文化が成熟して、短歌が狂言へと変わってきたことのように。男とか女とか関係なく、表現方法も内容も、教育も歴史も広告もなんでもありの、ボーダーの無くなってきた世界へと変化してきた。

更に、かっぴーの出現により、絵の上手い下手の話でも無くなってきたし、ヨッピーの出現によって、絵でも画像でも関係なくなってきた。

過ちと情報化社会の怖さ

そして、Wikipediaで作者情報を見てさらに驚いた。なんと、この作者は過去に盗作疑惑で不祥事を起こしていたのだった。気になる方は調べてもらえればすぐに出てくるが、作者本人もそれを認めており、ここで改めて情報化時代の情報の永続性というものの怖さを知った。

だが、それでようやく納得した。この話には、過去の失敗を償い続ける人物たちが出てくる。

つまり、登場人物は……『作者の人格の分身』なのだ。よくあるような、薄っぺらい形式だけのキャラクターは誰も出てこない。割合としては美男美女たちばかりではなく、結構ブサイク寄りのキャラクターも多い。

そういう部分も共感が持てるし、更にそうした人たちを公平に扱ってそれぞれのバックグラウンドをきちんと描いている所も素晴らしい。

百人一首と物語との関連性

百人一首という競技かるたがテーマとなっているだけあって、物語の中には名言の数々が出てくる。……おそらく、俺と同じく「言葉」とか「文章」へのこだわりや感性を持っている人なのだろう。そこに出てくる言葉の美しさは、漫画でありながらもどこか文学的だ。

百人一首ということもあり、それは歴史と文化が上乗せされて、話に深みを与えていく。日常的によくある光景ですら、それを歌に合わせてみると、どこか文学的に、どこか例えようのない、大事な郷愁感を伴って描かれていたりもする。

ベンチャーのバイブル

さて、冒頭に書いたように、この物語は『ベンチャーのバイブル』と呼んでもいいだろう。以下若干ネタバレになるので注意だ。

そもそも、競技かるたという分野がマイナーすぎて、かるた部を作るのですら最初は難しい。しかし、主人公のちはやは「ただ、かるたが好きだから」という理由だけで突き進み、周りを巻き込みながらチームを作り、大会を勝ち上がっていく。

そのチーム作りの部分が、フィクションでありながらも、非常に勇気づけられて参考にもなる所である。例えば、トップは『シンプルな目標を掲げる』所。相互メンタリングにより、客観性を磨く所。引っ張っていくエースと、支える部長。ステージが変わってからのチームの存続性の難しさ。創業メンバーとの別れ。ただ地道にひたすらに練習、改善、挑戦の繰り返し。ここでも素晴らしい言葉たちが出てくる。

『本当に高いプライドは、人を地道にさせる。目線を高く持ったまま』

3月のライオンと同じく、年配のキャラクターが出てくる話は素晴らしい。物語に時間という奥行きを与えてくれる。世界に才能はあっても、奇跡や魔法は無い。赤松健が描いている通り、「一歩踏み出す勇気が本当の魔法」なのだ。

ちはやふるには、決して都合の良い展開や、安易などんでん返しは待ち受けていない。……少なくとも、それを納得させられるだけの背景が描かれているので、ご都合主義な印象は受けないのだ。そういう意味では、かなり現実的なストーリーでもある。そして、誰もが突き当たるこの『競技かるた』という題材の壁。




競技かるた

かるたは、『職業ではない』のだ。

出てくる全員が、本業を持ったまま、趣味として参加しているのが現状。……しかし、そこへ作者からの一石が投じられる。「かるたしかできない」と嘆く、かるたクイーンへの一言。

「世界で最初のプロになりなさい」

これこそが、ベンチャーの真髄だろう。

……そこにない仕事を創りだすのだ。本当に大好きなものに出会えた時、人は初めて自分の人生を歩み始める。それに気付かせてくれるストーリーであり、全少年少女にオススメの漫画だ。

そして、作者のストーリー構成力の素晴らしさ。前半が過ぎてからの、縦と横、そして奥行きがもたらす物語の複雑な深み。弱虫ペダルのような一つ一つのエピソードの演出力。

出てくる全てのキャラクターの背景と成長、そして多様性。中でも特に、マイノリティへの寄り添い。そして孤独への立ち向かい方を教えてくれるような気がする。

あらぶるから ちはやふるへ

……きっと辛くなった時、俺はこれを何度でも読み返すだろう。

そして最後に、タイトルの部分にも触れておこう。「ちはやぶる」……『神』にかかる枕詞。高速で回転してぶれないコマの軸のように、安定している様。

ーー「あらぶる」から「ちはやふる」へ。 そんな神がかった存在に、一体どうやったらなれるのだろうか……?

今まさに、俺が考えているのと同じような悩みの答えへの道筋を与えてくれた物語でもある。

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