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アニメPSYCHO-PASS(サイコパス)に観る物語社会学は非常にリアリティのある近未来を描いていた

      2017/06/24

今をときめく虚淵玄がストーリー原案を手掛ける、あの【サイコパス】をようやく観れたので、レビューも兼ねて考察したことを書いておこう。物語社会学シリーズだ。




アニメ PSYCHO-PASS(サイコパス)とは

アニメ PSYCHO-PASS/http://psycho-pass.com/

さて、まずは簡単にこのサイコパスというアニメを紹介しよう。

舞台は近未来の日本。テクノロジーが高度に発達し、社会を統括するシステムによって、人々の精神までもスキャンして適正な進路が決められるようになった国。もはや犯罪を侵す可能性のある人材すらもシステムによって決定されるようになり、それを行うために設置された公安局刑事課の監視官と執行官たちの物語。

ストーリーは主に社会のあり方を問う犯罪者たちをその謎とともに追っていく流れになるのだが、さすが虚淵玄とも言える物語運びのうまさが見事だ。これまでにずっと長い間王道パターンとして暗黙の了解とされてきた、アニメにおける展開を裏切る形のストーリー進行に賞賛を送りたい。

虚淵玄(wikipedia)/https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%9A%E6%B7%B5%E7%8E%84

これまでのパターンというのは、大体主人公たちのチームがあり、そこに振りかかる障害を乗り越えていく中で各キャラクターに焦点が当てられる。

そして様々なエピソードを描いていくことにより、キャラクターに徐々に感情移入をさせていく……というパターンになるわけだが、そうした中で少しずつ伏線(フラグ)を散りばめながら、中心となるキャンペーンテーマを収束させるための大きな展開を作っていく……という感じとなるのがこれまでのパターンだ。

 

中だるみの無い展開

しかし、これまでのアニメ(または多くのマンガ)では、人気ストーリーを長く続けるため、時には物語展開の起伏に欠けるような中だるみとも思われるような回がよくある。

具体的に言うと、中心軸となるストーリーの盛り上がりに大きな展開があった後には、ほのぼの日常エピソードを交えた数話を混ぜる……と言った具合だ。

だが、先日紹介した【まどマギ】も同じだったが、きちんと最初から最後まで一連のエピソードとして連続的に続いており、それがクッション的ストーリーが入ることなく最後まで続く。これはなかなか最近のアニメでは見られない高いクオリティの作りなので、非常に素晴らしいと思う。

だが、大枠の設定で言うと、実はこのフレームは【カウボーイビバップ】というアニメの雰囲気に非常に近い。

近未来が舞台の、執行者対犯罪者という構図に加え、ハードボイルドな主人公と渋いおっさん、そして色気ある大人の女性におちゃらけた若者……そして後半のチームの別れ展開と、両方を観たものであればすぐに気が付く類似点がたくさんある。

さらに【攻殻機動隊】や他にも幾つかの世界観と似ている点もあるらしい。ただ、そうした部分を抜きにしても、このサイコパスは非常に優れた物語である点は間違いないので、以下にそのポイントとそこから気付いたことを書いてみよう。

攻殻機動隊と昆虫化する人間たち




・極めてリアリティのある近未来という舞台

世界観がまず見事だ。

最近開発中の様々なテクノロジーが実用化された未来が、細部にわたって詳細に描かれている。例えば各種ドローンや自動運転、さらにはウェアラブルデバイスやサイボーグ化、アフィリエイト暮らしに加え、そしてまさしくこの物語の肝とも言える社会システムにまで、ある程度想像しうる最新のテクノロジーが組み込まれた社会になっているのだ。

ある意味、この世界設定自体が物語の核とも言えるもので、ストーリー後半ではその世界観の中枢にまで話が食い込んで行くこととなる。……そして、このことで私はあることに気付いたわけなのだが、それは後半の記事へと持ち越すことにしよう。

・テクノロジーと心理との絶妙なディスコミュニケーション

このようなテクノロジーの進化は、必ずしも人類の精神を引き上げるものとは限らない。いつの時代にも、テクノロジーは使う者と使われる者に分かれるからだ。そうした矛盾点をこの物語では巧みに描いている。

人の心理がテクノロジーの進化に着いてこれない……または、そのテクノロジーの欠点によって精神を置き去りにしてしまうために起こり得る現象を、事件という形で取り上げている。

この部分は、ある意味ドラえもんがマイルドで単純に、誰にでも理解できるような理想を描いているのとは逆に、このままの方向性で社会のテクノロジーが進んだ時に起こり得る問題点を非常にリアルに描写している。

・徹底的なまでに単純化させない奥深い論旨

そしてそのリアリティは、ストーリーの根幹に奥深く突き刺さっている。おそらく原案である虚淵玄の人生観が、如実に反映されているのだろう。

これまでにも少し触れたと思うが、物語進化論の第一段階である、『勧善懲悪』が過ぎ、その次の『勧善懲悪?』が第二段階だとしよう。そうした場合、このサイコパスはその先の第三段階である『正義が正しいとは限らないし、悪が悪いとは限らない。けどそれでもしかし、我々は社会を維持するために正しいと思われる道を選ばなければならない』といった第二段階の問題提起に対する、現時点の社会での最適解のような一つの答えを観ることになるだろう。

正直、この答えは第二段階までで思考停止していた私の思考に強く響いた。そして納得させられた。私の中での法治国家への一つの答えである「法が人を守るのではない。人が法を守るのだ」という結論と全く同じだったからである。……そう、法は人を守るために存在するのだ。

・善と悪の逆転描写

この物語に出てくる登場人物には、喫煙者が多い。どうやら、意図的に正義側と悪側の立ち位置を入れ替えた描写が行われているらしい。物語としては正義側と思われる人々の方が、タバコを吸い、酒を飲み、様々な風紀を乱す傾向があるのだ。善悪の存在そのものを問うこの物語ならではのうまい描写だと言えるだろう。

・ナチュラルな台詞回し

ベテラン声優陣を起用した、芝居じみていない自然な台詞回しが非常にうまい。特に沢城みゆきなどは流石だ。むしろ作画とアニメーションの方が着いて行けていない感じがある。その台詞そのものもなかなかいい雰囲気なので、聞いていてとても心地がいい。

……聞いていて心地良いアニメというものは、何度も見直したくなるから不思議だ。音の力である。

・正に半歩先を行く物語と社会との融合

これらの部分を総合してみると、今正に迫り来る近未来への警鐘とも呼べるべき予言に近い作品に仕上がっていると思う。

特に前のまどマギでも取り扱われていた、『今現在我々が生きている社会』に対する疑問というものが隠喩的に非常にうまくテーマとして含まれている。これは先日読んだ【進撃の巨人】の最近のストーリー展開においても同様に描かれている。それはつまり、『我々はこの社会を良しとするのか?』という問題提起だ。

……ここは、かなり現在の社会情勢を表しているようにも思う。最早、社会風刺はマンガやアニメによって描かれるようになったと言っても過言ではないだろう。

 

まとめ

これらのポイントを見ていく中で、私はあることに気付いた。

しかしそれは何かということを語ろうとすると、少しこれまでに書いていたような一般的な話題からは逸脱してしまうことになってしまうだろう。ただでさえ言ってることが難しくて理解できないと言われがちな私なのだが、もう既に思いついてしまったので書かずにはいられない。これは自分の中では大発見だったし。

まあ、興味ある人だけ読んでみて頂きたい。それはまた、後日の記事で書くことだろう。

 

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